世界遺産「熊野古道」のほど近くにある温泉街に出現する、冬限定の秘湯。なんと街中を流れる川が、巨大な露天風呂に大変身です!
しかしその温泉街は、水害にコロナショックと、苦難の連続。さらに“冬の秘湯”開湯目前にも、再び自然が牙をむく事態が起きました。
自然と共存共栄する温泉街、復活にかける“思い”に迫ります。
■川湯温泉 楽しみ方は「マイ露天風呂」
和歌山県田辺市。2004年、世界遺産に登録された「熊野古道」で知られる、いにしえの街です。
熊野本宮大社からおよそ5キロの場所にある「川湯温泉」。8軒の宿が軒を連ねる、小さな温泉街です。
名物は、川から立ち上る“湯けむり”。「川湯温泉」は、その名の通り、街中を流れる川の底から、源泉が湧き出ているのです。
女性:「初めてです!こんなに掘るの初めて!」
「川湯温泉」の楽しみ方は、「マイ露天風呂」です。
女性:「あ~気持ち良い!」
温泉街の多くの宿では、この川から湧く源泉かけ流しの湯を堪能できます。
川湯温泉 旅の宿しば・芝伸一さん(63):「ここから温泉72℃。熱い湯が出ます。できるだけ源泉で入ってほしいので、朝からためて、夕方に適温になるように」
芝さんは、一日1組限定の民宿を切り盛りしています。
芝さん:「いらっしゃい、イェ~イ!久しぶり~大きなったんちゃうん?」
娘:「ちょっとズルしてる」
芝さん:「ズルしとんか!なんや~」
夫:「ここの温泉は、すごく疲れが取れてリフレッシュできる」
■台風で大被害…“一念発起”民宿を開業
元々は、消防職員だった芝さん。3年前、民宿を始めたきっかけは、温泉街を直撃したピンチでした。
芝さん:「台風被害に遭いまして、2018年かな。ここで泥かきしている時に、復興するには何かしようかなと思ってひらめいたのが、この貸し切り宿」
実は、温泉の恵みをもたらす大塔川は度々、水害を起こす、いわゆる「暴れ川」です。
温泉宿の女将:「どうしたらいいかなと思って。皆さんお手伝いに来てくれて、ちょっとずつ片付いてきよるんやけど、まだ中がこんなんでしょ…。どうしようかなと思って…」
2018年の台風による氾濫では、9軒もの宿が床上浸水。長期の休業に追い込まれ、温泉街は大きなダメージを受けました。
自らの実家も被災した芝さん。復旧作業に奔走するなか、地元のためにできることはと、一念発起したのだといいます。
芝さん:「『暗い、寂しいな』とか『暗い』だけでは、ますます暗くなっていくので。電気をつける、明かりをともすことで活気が出てくるかなと。光モノ好きやな、こんなやから!」
被災した地元温泉街に、一つでも明かりを増やす助けになりたい。そんな思いから、芝さんは実家をリフォーム。民宿を始めたのです。
芝さん:「まず、川湯を選んでもらわなアカン。一回だけじゃアカンもんね。また来たくなるような宿を作っとかんと」
■コロナ直撃…さらに“中心人物”も突如失う
ところが、被災から立ち上がった翌年。今度はコロナショックが、温泉街を直撃したのです。
芝さん:「ちょっとずつ軌道に乗ってきたかなって時に休業」
熊野本宮観光協会・名渕敬会長(58):「災害を乗り越えて、もう一度始めた時に、コロナ禍が来てしまいましたので。通常の月の1割、2割にまで落ち込みました」
苦しい状況の温泉街。そんななか、これまで街を支えてきた中心人物を、突如失う出来事がありました。
名渕会長:「頑張っていた若手の一人でしたので、その方が自分で自分の身を引いたのは大変痛手です